【Flutter】IgnorePointerで制御するタッチ操作

対象者

  • Flutterを使用したアプリ開発に携わっており、UI操作の一部を無視する方法を探している人
  • IgnorePointerの役割や使い方、動作原理について学びたいと思っている人
  • 新たな技術や概念を習得することに意欲的で、自分のスキルセットを向上させたい人

はじめに

Flutterを使ってアプリ開発を行っていると、特定の部分におけるユーザーの操作を無視したいという状況に出くわすことがあります。そんなとき、便利なウィジェットが「IgnorePointer」です。

このIgnorePointerは名前からも分かる通り、指定した部分の「タッチ操作を無視」するという非常にユニークな特性を持つウィジェット。つまり、これを使うことで特定のウィジェットへの操作を一時的に無効化することが可能となるのです。また、さらなる制御を可能にするAbsorbPointerというウィジェットとの違いも知っておくと役立つでしょう。これらのウィジェットを単純に使うだけではなく、実際の動作原理や使い方を理解して、最大限にその性能を引き出すことが重要です。

実際のアプリとしては、アップデート通知などのポップアップ表示があるときに、背景の操作を一時的に無効にするといったケースにIgnorePointerというウィジェットを使用して、ユーザーの操作を制限するというような機能を実現することができます。

この記事を読めば、IgnorePointerの本当の力を理解し、それを自分のアプリ開発にうまく活用する方法を身につけることができるでしょう。さあ、一緒にIgnorePointerを理解し、より良いUI操作をユーザーに提供する方法を学んでいきましょう。

IgnorePointerの基本的な説明

IgnorePointerとは、Flutterのウィジェットの一つであり、それを使用することで特定のウィジェットのタッチイベントを無効化することができます。これは、そのウィジェットとその子要素に対して適用されます。IgnorePointerを使うと、ユーザーがタッチしたときに反応する部分を制御できます。

IgnorePointer(
  ignoring: true,
  child: MyWidget(),
)

上記のように使用します。ignoringプロパティにtrueを設定すると、MyWidgetおよびその子要素はタッチイベントを無視するようになります。

IgnorePointerの特性と使い道

IgnorePointerの特性として、その子要素のすべてがタッチイベントを無視するようになるという点が挙げられます。これは、特定の操作を防ぐために使用されます。例えば、データの読み込み中にユーザーがUIの他の部分を操作できないようにする場合や、特定の条件下でのみ一部のウィジェットを操作可能にする場合などに役立ちます。

また、このウィジェットは透明であり、その見た目には影響を与えません。したがって、その使用は完全にユーザーのインタラクションに影響を与え、UIの見た目には影響を与えないことを覚えておくことが重要です。

bool _ignoring = true;

IgnorePointer(
    ignoring: _ignoring,
    child: FloatingActionButton(
      onPressed: _incrementCounter,
      tooltip: 'Increment',
      child: Icon(Icons.add),
    ),
),

上記のコードは、_ignoringtrueの間、IgnorePointerはその子要素であるFloatingActionButtonウィジェットとその子要素を操作不可能にします。

コードサンプルと説明

IgnorePointerの基本的な使い方は非常にシンプルです。子ウィジェットをタッチイベントから保護するためには、子ウィジェットをIgnorePointerウィジェットでラップします。

IgnorePointer(
  ignoring: true,
  child: MyWidget(),
)

上記のコードにおいて、ignoringプロパティをtrueに設定することで、MyWidgetとその子孫ウィジェットはユーザーからのタッチイベントを無視します。逆にignoringfalseにすると、IgnorePointerは存在しないかのように動作します。

タッチイベントの制御

IgnorePointerは子孫ウィジェットのタッチイベントを制御しますが、その挙動はignoringプロパティの値によって決まります。ignoringtrueのとき、子孫ウィジェットはタッチイベントを無視します。一方、ignoringfalseの場合、子孫ウィジェットは通常通りタッチイベントを受け取ります。これにより、ウィジェットの状態やアプリの状況に応じて動的にタッチイベントの受け取りを制御することができます。

以下の例では、チェックボックスの状態に応じてウィジェットのタッチイベントを制御しています。

class _MyHomePageState extends State<MyHomePage> {
  int _counter = 0;
  var _ignoring = false;

  void _incrementCounter() {
    setState(() {
      _counter++;
    });
  }

  @override
  Widget build(BuildContext context) {
    return Scaffold(
      appBar: AppBar(
        title: Text(widget.title),
      ),
      body: Center(
        child: Column(
          mainAxisAlignment: MainAxisAlignment.center,
          children: <Widget>[
            Text(
              'You have pushed the button this many times:',
            ),
            Text(
              '$_counter',
              style: Theme.of(context).textTheme.headline4,
            ),
            Row(
              mainAxisAlignment: MainAxisAlignment.center,
              children: [
                Text('_ignoring'),
                Checkbox(
                    value: _ignoring,
                    onChanged: (value) {
                      setState(() {
                        _ignoring = value ?? false;
                      });
                      _ignoring = value ?? false;
                    }),
              ],
            ),
          ],
        ),
      ),
      floatingActionButton: IgnorePointer(
        ignoring: _ignoring,
        child: FloatingActionButton(
          onPressed: _incrementCounter,
          tooltip: 'Increment',
          child: Icon(Icons.add),
        ),
      ),
    );
  }
}

上記のコードでは、チェックボックスがOFFのときFloatingActionButtonウィジェットはタッチイベントを無視します。これにより、ユーザーはウィジェットをタッチしても何の反応も得ることができません。スイッチがONのときは、ウィジェットは通常通り動作します。

AbsorbPointerの基本的な説明

AbsorbPointerとは、Flutterで提供されているウィジェットの一つで、子ウィジェットのタッチイベントを制御します。IgnorePointerと同じく、このウィジェットを使用することで子ウィジェットのタッチイベントを無視することが可能です。

ただし、AbsorbPointerとIgnorePointerの動作には微妙な違いがあります。AbsorbPointerは、子ウィジェットがタッチイベントを無視するだけでなく、タッチイベント自体を吸収(つまり、自身よりも背後にあるウィジェットへのイベント伝播を防ぐ)します。

AbsorbPointer(
  absorbing: true,
  child: MyWidget(),
)

上記のコードでは、MyWidgetとその子孫ウィジェットはタッチイベントを無視し、そのイベントはStack上などの背後のウィジェットにも伝わりません。

【Flutter】AbsorbPointerでタッチイベント制御

AbsorbPointerとIgnorePointerの使い方の違い

AbsorbPointerとIgnorePointerはよく似たウィジェットであり、ともに子ウィジェットのタッチイベントを制御します。しかし、それぞれがタッチイベントをどのように制御するかには違いがあります。

IgnorePointerは子ウィジェットのタッチイベントを無視するだけで、そのイベントは背後のウィジェットに伝わる可能性があります。一方、AbsorbPointerは子ウィジェットがタッチイベントを無視するだけでなく、そのイベントを吸収して背後のウィジェットに伝わらないようにします。

つまり、IgnorePointerは子ウィジェットからタッチイベントを”遮断”するのに対し、AbsorbPointerはそのタッチイベントを”吸収”します。したがって、Stack上でどのWidgetがタッチイベントを受け取るかを制御する必要がある場合、AbsorbPointerを使用することを検討してみてください。

これらのウィジェットの使い方の違いを理解することで、より効果的にFlutterのタッチイベントシステムを制御することができます。それぞれの特性とニーズに合わせて、最適なウィジェットを選択してください。

IgnorePointerの応用例

IgnorePointerを使ったアプリケーション例

Flutterのアプリケーション開発では、さまざまなシーンでIgnorePointerウィジェットが有用です。その一例として、ユーザーインタラクションを一時的に無効にする場合が挙げられます。

例えば、あるページのロード中に他のウィジェットを操作できないようにするといった状況です。このような場合、以下のようにIgnorePointerを適用することで、ウィジェットの操作を一時的に無効にすることが可能です。

IgnorePointer(
  ignoring: _isLoading, // _isLoadingがtrueのときにタッチイベントを無視
  child: Scaffold(
    appBar: AppBar(),
    body: Center(
      child: FillededButton(
        onPressed: () {
          // do something
        },
        child: Text('Button'),
      ),
    ),
  ),
)

上記のコードは、_isLoading変数がtrueである間、タッチイベントを無視し、ユーザーがボタンを押すことができないようにしています。

タッチイベントを制御する詳細な方法

IgnorePointerウィジェットは、簡単にタッチイベントを制御することができますが、より詳細な制御を行う場合は、IgnorePointerだけでなく他のウィジェットや手法を組み合わせることが必要となります。

例えば、特定のウィジェットだけにIgnorePointerを適用したい場合は、そのウィジェットをIgnorePointerウィジェットの子ウィジェットとして配置します。

また、IgnorePointerウィジェット以外にも、GestureDetectorウィジェットやListenerウィジェットなどを使用して、特定のジェスチャーを無視したり、独自のジェスチャーハンドラーを作成したりすることも可能です。

これらのウィジェットと手法を組み合わせることで、より詳細なタッチイベント制御を行うことができます。必要に応じて、最適なウィジェットや手法を選択してください。

IgnorePointerの挙動と理解

IgnorePointerとGestureArena

Flutterでは、ユーザーからの複数のジェスチャーを管理するためにGestureArenaという仕組みが用意されています。このGestureArenaは、同時に発生したジェスチャーに対して、どのジェスチャーディテクターが反応するかを判断します。IgnorePointerウィジェットはこのGestureArenaに影響を与え、その子ウィジェットがジェスチャー競争に参加するのを防ぎます。

具体的には、IgnorePointerウィジェットの”ignoring”プロパティが”true”に設定されていると、その子ウィジェットのタッチイベントは完全に無視されます。この結果、GestureArenaは他のウィジェットのジェスチャーディテクターにイベントを送信します。

タッチイベントの登録と制御

Flutterのウィジェットは、ユーザーからのタッチイベントを受け取るために、GestureDetectorウィジェットやListenerウィジェットなどのジェスチャーディテクターを使用します。これらのジェスチャーディテクターは、特定のジェスチャーが発生したときに、それに対応するコールバック関数を登録します。

IgnorePointerウィジェットは、これらのジェスチャーディテクターが登録するコールバック関数を無効にします。つまり、IgnorePointerウィジェットの子ウィジェットが持つジェスチャーディテクターは、タッチイベントを受け取ることができなくなります。

これにより、例えばアプリケーションがローディング中である場合など、特定の状況下でユーザーからのタッチイベントを制御することが可能となります。このようにIgnorePointerウィジェットは、アプリケーションのユーザビリティを高めるための有効なツールと言えるでしょう。

Q&A

Q1: IgnorePointerAbsorbPointerの主な違いは何ですか?

A1: IgnorePointerAbsorbPointerは両方ともFlutterでユーザーからのポインタ(タッチ)イベントを制御するウィジェットですが、動作の違いがあります。IgnorePointerはその子ウィジェット全てに対してタッチイベントを無効化します。一方、AbsorbPointerは自身がタッチイベントを吸収(absorb)し、Stackなどの下のウィジェットへのイベントの伝播を防ぎます。

Q2: FlutterのGestureArenaとは何ですか?

A2: FlutterのGestureArenaは、複数のジェスチャー・ディテクターが同じポインタイベントに対して競合する場合に、どのジェスチャーがイベントを獲得するかを決定する仕組みです。IgnorePointerAbsorbPointerのようなウィジェットはこのGestureArenaと関連して動作します。

Q3: IgnorePointerの実用的な使い例は何かありますか?

A3: IgnorePointerはUIの特定の部分がユーザーからのタッチ入力を無視するように設定したい場合に役立ちます。例えば、ローディングインジケーターが表示されている間は、その背後のUI要素に対する操作を無効化したいというようなケースで利用できます。

まとめ

FlutterのIgnorePointerについて詳しく学びました。また、AbsorbPointerとの微妙な違いも理解することができました。

IgnorePointerは、指定した部分のUIがユーザーからのポインタイベントを無視するようにするウィジェットで、タッチイベントの制御を簡単にするためのものでした。一方、AbsorbPointerは同じような機能を持つものの、子ウィジェットへのイベントの伝達をブロックするという違いがありました。

特に重要な点は、これらのウィジェットがどのようにしてタッチイベントを制御し、FlutterのGestureArenaとどのように関連しているかでした。また、この理解が深まると、より高度なタッチイベント制御が可能になり、アプリケーション開発が一段と容易になりました。

最後に、アプリケーション開発の現場で実際にどのように活用できるか、実用的な例を見ることができました。これにより、理論だけでなく実践的な理解も深めることができました。

以下に、本記事で取り上げた主要なポイントを再度整理しています。

  • IgnorePointerはUIがポインタイベントを無視するようにするウィジェット
  • AbsorbPointerは子ウィジェットへのイベントの伝達をブロックするウィジェット
  • これらのウィジェットはFlutterのGestureArenaと関連している
  • 高度なタッチイベント制御が可能になり、アプリケーション開発が一段と容易になる
  • 理論だけでなく、実用的な例を通じた実践的な理解が深まる

以上、詳しく学んだ結果、UI操作の効率化に対する新たな視点を得ることができました。この知識を使って、今後の開発に活かしていきましょう。

参考

ソース(main.dartにコピペして動作確認用)

import 'package:flutter/material.dart';

void main() {
  runApp(MyApp());
}

class MyApp extends StatelessWidget {
  @override
  Widget build(BuildContext context) {
    return MaterialApp(
      title: 'Flutter Demo',
      theme: ThemeData(
        primarySwatch: Colors.blue,
      ),
      home: MyHomePage(title: 'Flutter Demo Home Page'),
    );
  }
}

class MyHomePage extends StatefulWidget {
  MyHomePage({Key? key, required this.title}) : super(key: key);

  final String title;

  @override
  State<MyHomePage> createState() => _MyHomePageState();
}

class _MyHomePageState extends State<MyHomePage> {
  int _counter = 0;
  var _ignoring = false;

  void _incrementCounter() {
    setState(() {
      _counter++;
    });
  }

  @override
  Widget build(BuildContext context) {
    return Scaffold(
      appBar: AppBar(
        title: Text(widget.title),
      ),
      body: Center(
        child: Column(
          mainAxisAlignment: MainAxisAlignment.center,
          children: <Widget>[
            Text(
              'You have pushed the button this many times:',
            ),
            Text(
              '$_counter',
              style: Theme.of(context).textTheme.headline4,
            ),
            Row(
              mainAxisAlignment: MainAxisAlignment.center,
              children: [
                Text('_ignoring'),
                Checkbox(
                    value: _ignoring,
                    onChanged: (value) {
                      setState(() {
                        _ignoring = value ?? false;
                      });
                    }),
              ],
            ),
          ],
        ),
      ),
      floatingActionButton: IgnorePointer(
        ignoring: _ignoring,
        child: FloatingActionButton(
          onPressed: _incrementCounter,
          tooltip: 'Increment',
          child: Icon(Icons.add),
        ),
      ),
    );
  }
}